外貨建てでクレジットカード支払いをする場合、VISA/マスター/JCB/AMEXなど「国際ブランド」と呼ばれる会社が、カード会社の代わりに外貨両替をしてくれます。
で、その外貨建てカード払い時の両替レートは、VISA/マスター/JCB/AMEXなど「国際ブランド」によって違うんです。その違いについて、この記事では解説していきます。
まず、前提知識なのですが、外貨建て支払いでかかる手数料は↓下の2種類。
手数料②海外ショッピング手数料:カード発行会社(例 楽天,エポス)が取る
手数料①両替手数料:VISA,JCB,マスターカード,AMEXなどの「国際ブランド」が取る。両替レートへ上乗せされている。
このページの記事は、↑この①の両替手数料(=国際ブランドのレート上乗せ)を比較・分析した記事です。(②に関しては、こちらの記事で比較しております。⇒海外ショッピング手数料比較)
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VISA、マスターカード、JCB、アメックス。これら「国際ブランド」って、どれを選べばいいか、迷いますよね。
選び方の一つのポイントとなるのが、両替レートの違いです。VISA、マスターカード、JCB、アメックスは、それぞれ独自のレートを使っています。
つまり、ニュースなどに流れる「1ドル=140円」という中間レートに、それぞれ独自に上乗せ分を決めて独自のレートを作っている感じ。イメージとしては、↓こうです。
中間レート 1ドル=140円 のとき
VISAレート 1ドル=140.5円
Masterレート 1ドル=140.4円
JCBレート 1ドル=140.3円
AMEXレート 1ドル=140.8円
そして、それぞれのレートは
します。主要な通貨で見た場合、↓このように変化しています。
●2018年〜2019年:VISA,Master,JCBの差が縮小
●2021年〜2023年:←今回の調査。また違う結果になりました(汗)
マスターカードが一番レートが良かった時代は、すでに終わっています。
このページでは、最新&過去の為替レートのデータ
・2023年8月の31日間 ←新たに追加!!
・2021年11月の30日間
・2019年4月の30日間
・2018年4月の30日間
を元に、VISA、マスターカード、JCBで、どの通貨で、どれがお得なのか、を分析していきます。
※アメックスは両替レート非公開なので比較に入れていません。ちまたでは、アメックスの両替レートはそんなに良くないと言われています。
- 1 先に結論
- 2 アメリカ(米ドル)為替レート比較。1位JCB、2位マスター、3位VISA
- 3 ユーロ為替レート比較。1位JCB、同率2位でVISA/マスター
- 4 台湾ドル為替レート比較は1位VISA、2位JCB。マスターは最悪
- 5 中国元の為替レート比較ではマスター/VISA/JCBはほぼ同じ
- 6 マレーシア・リンギット為替レート比較は1位JCB、同率2位でVISA/マスター
- 7 フィリピン・ペソの為替レート比較は1位JCB、2位VISA、3位マスター
- 8 オーストラリア豪ドルの為替レート比較は1位JCB、同率2位でマスター/VISA
- 9 韓国ウォン為替レート比較は1位VISA、2位マスター、3位JCB
- 10 シンガポール・ドル為替レート比較。1位JCB、2位マスター、3位VISA
- 11 イギリス・ポンドの為替レート比較は異色の結果。マスターカードが惨敗
- 12 カナダ・ドル為替レート比較。1位JCB、2位VISA、3位マスター
- 13 タイ・バーツの為替レート比較。1位JCB、同率2位でVISA/マスター
- 14 ベトナム・ドン為替レート比較。1位JCB、2位VISA、3位マスター
- 15 香港ドル為替レート比較は、JCB/VISA/マスター3者ほぼ同じ
- 16 インドネシア・ルピア為替レート比較は、1位JCB、2位VISA、3位マスター
- 17 まとめ
先に結論

最新の傾向をまとめると、↓こんな感じです。
●
●VISAとMasterはほぼ同じ(ポンドとペソはMasterがダメ)
●2021年から両替手数料は高止まり傾向(2023年≒2021年>2019年)
●3者とも手数料が多い通貨は、タイバーツ、シンガポールドル、カナダドル、マレーシアリンギット
●3者の手数料の差が大きい通貨は、英ポンド、フィリピンペソ、マレーシアリンギット、カナダドル、タイバーツ
●3者の手数料の差が小さい通貨は、中国元、香港ドル、台湾ドル、韓国ウォン
2018年と2019年はVISA/マスター/JCBの3者混戦でしたが、2021年にJCBが抜け出し、JCB優位が2023年も続いている感じ。ただ、JCBは実際の利用では海外で加盟店が多いのはハワイくらい。ということは、やはり、その他の国/地域では、VISAかマスターカードを準備したほうが良さそうです。
JCBは、海外通販など、JCBが使えることがわかっている店で使う、という形になりそうですね。
Master/JCB/VISAのレート差は再び拡大中
VISA,Master,JCBの3者のレートの差を全体的に見るために、15通貨で3者の差の平均値を取ってみました。2019年には一旦、小さくなった差は、↓こんな感じで再び拡大していることがわかりました。
2018年 0.32%
2019年 0.18%
2021年 0.22%
2023年 0.26%
特に、↓下記の通貨は、VISA/マスター/JCBの3者間の差が大きいので(0.4%以上)、クレジットカードの国際ブランドをちゃんと選ぶべきです。
イギリスポンド :0.59%
フィリピンペソ :0.45%
マレーシアリンギット:0.45%
タイバーツ :0.40%
カナダドル :0.40%
では、ここからは通貨ごとに見ていきます。上の表は、あくまで1ヶ月間の平均だったので、日ごとの差をグラフ付きで見ていきましょう。
↓下の通貨名をクリックすると下の通貨ごとの解説に飛びます。
アメリカ米ドル ユーロ 台湾ドル 中国元 マレーシア・リンギット フィリピン・ペソ オーストラリアドル 韓国ウォン シンガポール・ドル イギリス・ポンド カナダ・ドル タイ・バーツ ベトナム・ドン 香港ドル インドネシア・ルピア
両替レート比較グラフの注意点
データは、それぞれ、VISA公式サイト、マスターカード公式サイト、JCB公式サイトから取ってきたデータを元に作成しています。(↑VISAが日本のサイトで公開になりました)
上乗せ率の計算は、例えば、円→ドルのレートと、ドル→円のレートを調べ、その中間値からの差を上乗せ率としています。それを1日ごとに比較。
(※マスターは前日のレートのまとめを当日レートとして公表している感じなので、比較のためにグラフでは、マスターのレートを1日遅らせて比較しています)
上記のJCB公式サイトのデータは数値が途中で切り捨てられているのですが、こちらのJCB Base rateのページを使うと、JCBレートの細かい数字まで出せることが判明しました!
アメリカ(米ドル)為替レート比較。1位JCB、2位マスター、3位VISA
2023年もJCBが一番お得。2021年と同じですね。2019年はJCB/VISA/マスターで3者差が無かったのですが、JCBが2018年のように再びがんばり始めた模様。
JCBの手数料率がVISA/マスターの半分以下の日も多いです。
特にJCB加盟店の多いハワイなら、JCBを用意しておくとお得ですね。
VISA/マスターの差は小さく、VISAかマスターかどっちか?と言われたら、「少しだけマスターのほうが良い日が多い」という程度。
ユーロ為替レート比較。1位JCB、同率2位でVISA/マスター
2021年、2019年は、JCB/VISA/マスターで3者の差ほほぼ無かったのですが、2023年はJCBが頭一つ抜け出した感じです。
ユーロで、VISAかマスターかどっち?と言われたら、マスターのほうが少しお得な日が多い感じ。
台湾ドル為替レート比較は1位VISA、2位JCB。マスターは最悪
台湾は、マスターのレートが最悪な場所となりました。2018年、2019年、2021年は最悪はJCBだったのですがJCBが改善。以前は、台湾、中国、韓国は、JCBのレートは悪かったのですが、今は悪くありません。
台湾は、JCB加盟店がわりと多いはずなので、使いやすくなりましたね。
台湾ドルで、VISAかマスターカードかどっち?と言われたら、VISAの勝ち。
中国元の為替レート比較ではマスター/VISA/JCBはほぼ同じ
3者、勝ったり負けたり、という感じです。
2018年、2019年、2021年とJCBのレートが悪かったのですが、2023年にJCBは大きく改善しました。
中国元で、VISAかマスターかどっち?と言われれば、VISAのレートのほうが良いことが多いです。
マレーシア・リンギット為替レート比較は1位JCB、同率2位でVISA/マスター
という順位は、2021年と同じ。
注意したいのは、リンギットは、1位JCBが0.2%なのに対し、VISA/マスターが0.6%と3倍以上の違いがあること。可能ならJCBで支払いたいです。
リンギットで、VISAかマスターかどっち?と言われれば、↑上のグラフの通り「両方ほぼ同じ」と答えるしかないですね。
フィリピン・ペソの為替レート比較は1位JCB、2位VISA、3位マスター
ペソでは3位のマスターカードだけがかなり悪いレートになっているので注意が必要。3位のマスターは、1位のJCBの約2.5倍の手数料です。
フィリピンペソで、VISAかマスターかどっち?と言われたら、迷わずVISAの勝ち。
「VISAとマスターの差が大きい」のは、フィリピンペソとイギリスポンドだけに見られる現象で、2021年から続いています。
オーストラリア豪ドルの為替レート比較は1位JCB、同率2位でマスター/VISA
2018年〜2021年はVISAが3位だったのですが、VISAが改善してマスターと同じになりました。
マスターとVISAの日ごとの比較でも、勝っている日数が両者ほぼ同じです。
韓国ウォン為替レート比較は1位VISA、2位マスター、3位JCB
唯一、JCBがダメな場所が韓国です。ただし、3者のレート差は小さいですけどね。
韓国ウォンのレートは、全体的にかなり改善。両替手数料は、2021年の約0.8%から約0.4%に減りました。
韓国ウォンで、VISAかマスターどっちか?と言われたら、VISAのほうが少しだけ勝つ日数が多い感じです。
シンガポール・ドル為替レート比較。1位JCB、2位マスター、3位VISA
これは、2021年、2019年の結果と同じ。
シンガポールドルは3者の平均が「0.54%」と、両替手数料が高い通貨なので、国際ブランド選びは慎重に。JCBなら他2者の半分ほどの両替手数料で済みます。
シンガポールドルで、VISAかマスターどっちか?と言われたら、マスターのほうが勝つ日が多いです。
イギリス・ポンドの為替レート比較は異色の結果。マスターカードが惨敗
です。そして実はこの順位は2021年も2019年も同じ。
マスターカードは、イギリスとフィリピンでだけ特に悪いので注意。これは覚えておきましょう。
イギリスポンドは、2021年に引き続き今回も、VISA/マスター/JCB、3者のレート差が一番大きかった通貨です。その差は0.59%。マスターカードを避けるだけで、約0.4%節約できます。
カナダ・ドル為替レート比較。1位JCB、2位VISA、3位マスター
カナダドルもJCB/Master/VISAの差が「0.40%」と大きいので、支払いには注意したいところ。
カナダドルは、タイ・バーツに次いで2番目に、為替レートの上乗せが大きい通貨なので要注意。VISA/マスターだと、JCBの2倍以上の両替手数料がかかります。
カナダドルで、VISAかマスターどっちか?選ぶなら、VISAのほうが少しだけ勝つ日が多い、という感じ。
タイ・バーツの為替レート比較。1位JCB、同率2位でVISA/マスター
タイ・バーツもVISA/JCB/マスターの差が大きい通貨です。2021年調査では一旦、差が小さくなたのですが、2023年にまだ大きくなりました。
両替手数料が高いのもタイ・バーツの特徴で、VISA/マスターだと約0.8%も取られます。JCBだとVISA/マスターの半分の両替手数料で済むので、上手に使いたいところ。
タイ・バーツでVISAかマスターかどっちが良いか?と聞かれたら、「ほぼ同じ」という答えですね。
ベトナム・ドン為替レート比較。1位JCB、2位VISA、3位マスター
ベトナム・ドンは、以前はJCBレートが判定不能でしたが、算出方法がわかったので、今回から3者比較ができるようになりました!
しかも、1位JCBと比較して2位以下は、両替手数料が倍に増えます。
ベトナムドンで、VISAとマスターカードの2者の比較なら、VISAの勝利。以前は両者は大差なしだったのですが、VISAが改善しましたね。
香港ドル為替レート比較は、JCB/VISA/マスター3者ほぼ同じ
これは2023年、2021年、2019年と同じ。
ただ、日々の変化で見ると、VISAのレートが良いときと悪いときの差が大きいです。
インドネシア・ルピア為替レート比較は、1位JCB、2位VISA、3位マスター
インドネシア・ルピアは、以前は、小数点以下が小さすぎてJCBレートは判定不能でしたが、今回、算出方法を発見したので、初の結果になります。
結果は、
2位のVISAと3位のマスターの差もハッキリ出ました。ルピアで、VISAかマスターかどっちか?と言われたら、VISAですね。
まとめ
●
●VISAとMasterはほぼ同じ(ポンドとペソはMasterがダメ)
●2021年から両替手数料は高止まり傾向(2023年≒2021年>2019年)
●3者とも手数料が多い通貨は、タイバーツ、シンガポールドル、カナダドル、マレーシアリンギット
●3者の手数料の差が大きい通貨は、英ポンド、フィリピンペソ、マレーシアリンギット、カナダドル、タイバーツ
●3者の手数料の差が小さい通貨は、中国元、香港ドル、台湾ドル、韓国ウォン
上手な使い方をまとめると、↓こうなりますね。
●使えるならJCBを使う
●JCBが使えないところでは、VISAかマスター。両者は大差ない
(イギリスとフィリピンはVISA)
●イギリスとフィリピンでは、マスターカードは使わない
●中国、香港、台湾、韓国なら、3者ほぼ同じ
あと、↑このMaster/JCB/VISAのレートだけで、お得なカードが決まるわけではありません。
●海外でのショッピング利用でのカード払いの場合は、この両替レートにプラスして、カード会社ごとの海外ショッピング手数料(0〜5%)がかかり、そちらのほうが比重が大きいです。その海外ショッピング手数料の比較の記事はこちら。
●海外ATM引出し(=海外キャッシング)の場合は、この両替レートにプラスして、ATM手数料や利息など(0%〜約3%)がかかり、ここでもまた、こちらの手数料のほうが比重が大きいです。その海外キャッシング手数料比較一覧表はこちら。
海外30ヶ所以上で調査した、海外ATM引き出しでのイチオシカードは、↓こちらのカードです。